2011年6月4日土曜日

出:警告は発せられた


大地動乱の時代―地震学者は警告する (岩波新書)
大地動乱の時代―地震学者は警告する』(石橋克彦、岩波新書)

地震や震災に関する研究ほど、総合的な学問はない。
最近の観測データはあるにしても、地面の下を見ることはできないから、どこまで行っても推測が入る。
何百年も昔に関してはデータもないから、震災の文献から被害状況を調べて震度やマグニチュードを推定するしかない。
あらゆる科学的知見に加えて文科系の仕事も重要であって、それらの膨大な知識を詰め込んだ上で将来の地震の予知をするのだが、なにぶんにもまだまだ全然わからないことだらけだ。

要するに非常に難しい学問であって、イタリアのほうで地震を予知できなかったといって地震学者が訴えられたらしいが、そいつは酷というものだ。

なんといっても本書で重要なのは、東京一極集中に対する警告だ。
坂本タクマも長年それを警戒している。
東京のたくさんの人材と一緒に坂本タクマも失われてしまっては国家の損失は計り知れないと思い、地方に暮らしている。
それが地震県・宮城であるのは何とも不合理で、3・11で先に被災してしまったのは皮肉ではあるが。

警告は発せられている。
首都圏が大震災に襲われるのは避けようのないことであって、それはいつ起こってもおかしくない。
一刻も早く人口集中を解消しなければならないとこの本は言っているし、政治の世界でも議論されてきた。
しかし地方に分散するどころか、ますます首都圏に集中している。
日本人は日本の抱えるリスクをあまり理解していないように思える。

阪神や東北で先に大地震が起こったのはまだ幸いだったのかも知れない。
ここで得られた様々な教訓を、絶対に来る首都圏大地震のために生かすことができなければ、日本の滅びは近い。

手始めに大手出版社あたりが首都圏脱出の英断を下してもいいのではないか。

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