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2026年5月8日金曜日

出:大いなる誤算

 『大いなる遺産(上)

大いなる遺産(下)

  (ディケンズ・著、山西英一・訳、新潮文庫)


あ、娯楽なんだ、と思った。

格調高い文学の香り、のようなものを予想していたらそんなことはなく、

いきなりあらゆるキャラが立ちまくりで、やり方としては漫画にも近い。

売る気満々やん。実際売れたんだろうと思う。


当時の社会情勢を反映した話ということらしいがそんなことはどうでもよく、

ただただ印象的な場面の数々を楽しめばよい。

主義主張も宗教色も強くないし、古典にしてはわかりやすい。


ただ、読むのにはすごく時間がかかった。

多分、翻訳の問題だろう。

訳が古いというか、言葉遣いも文の構造も、

今の翻訳家なならこんな訳し方はしないだろうな、という文章で、

難しことは何にも言ってないのにすっと頭に入ってこないところがある。

同じ新潮文庫を含め新訳が複数出ているので、

きっともっと読みやすくなっていると思う。


海外の古典がずっと読み継がれているということは、

ずっと新しい訳が出続けているということなんだと気づく。


読了指数

今回:+2

合計:-98


2025年9月13日土曜日

出:サリンジャー年代記

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(J・D・サリンジャー=著、村上春樹=訳、白水社)
『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』(村上春樹、柴田元幸、文春新書)

この2冊はセットと考える。
『キャッチャー』を読んだあとで『サリンジャー戦記』を読むと
いろんな事情がよくわかる仕組みになっている。

『キャッチャー』については、『ライ麦畑でつかまえて』という有名なタイトルで
野﨑孝訳がすでに出ていて、それは確か大学1年の時に読んで
ひどくブッ刺さって、いまだにそのときのそれを引きずって生きている
ようなところがある。
間違いなく好きな小説の一つだ。

にもかかわらず、この村上春樹の新訳を買ってから22年間積ん読jしたのちに
読んでみれば、ほとんど1場面も覚えていないことに別の意味の衝撃を受けた。
好き言う割には1回しか読んでなかったし。
それはそれで新鮮な気持ちで読めてよかったのだが、
じゃあ、最初のあのガツンと来たアレをもう1回感じられたかというと
そういうわけではなく……。

原因は3つ考えられる。

1.訳が変わった
2.時代が変わった
3.オレが変わった

1と2は強い関連があって、そのへんの事情は『戦記』で
詳しく語られている。
村上訳は確かに語り口がちょっとソフトになったのかな、という気はする。
でも大きいのはやっぱり3か。
だって、主人公のホールデンって
オレの子どもより年下なんだから。
え、こわっ。

この小説がどうして筋を忘れられがちなのか、
といったことは『戦記』を読めばわかる。
そのほか、『戦記』にはこの小説の制作過程とか
作者サリンジャーの生い立ちとか経歴とか、
そういったものがぎっしりと載っている。
また、サリンジャーの意向により小説本のほうには載せられなかった、
訳者・村上による「幻の」解説も載っている。

要するに、サリンジャーが嫌がりそうなものが『戦記』には全部載っている。
それがインチキ臭いと思えば『戦記』のほうは読まないで
『キャッチャー』だけを読めばいいし、
裏事情をいろいろ知りたいのであれば『キャッチャー』のあとに
『戦記』を読むことを強くお勧めする。

ところで、『サリンジャー戦記』のほうに、しおりがはさまっていた。
1980円の翻訳ソフトを宣伝するもの。
当時の本屋が挟んでよこしたんだと思う。
タイトルに『翻訳夜話』とあるからなのか?
今となっては、おそらくそのソフトよりはるかに高精度な翻訳が
無料で行える。
ただ、村上春樹の翻訳を越えるような質のものは
機会には未来永劫できないだろう。

読了指数
今回:+2
合計:-100

2025年7月26日土曜日

出:ネタバレの泉(ネタバレ無し)

 『死の泉』(皆川博子、早川書房)

素晴らしいとしか言いようがない。
そのほかのことは何を言ってもネタバレになりそうで、言うことができない。
何もかもがネタバレになるというネタバレをしてしまっていることの
心苦しさは、もちろんある。

最近ドイツ語を勉強していて、
そのおかげもあってだいぶ読みやすかった。

手元にあるのは1997年の初版本。
それを新刊で買ったが、28年間ずっと目の前の本棚に刺さっていて
1ページも読んでいなかった。
でも、それでよかったんじゃないか。
今読むのがオレにとって最高のタイミングだったと思う。

読了指数
今回:+1
合計:-102

2025年6月6日金曜日

出:高く孤独な積みを解け

 『高く孤独な道を行け』(ドン・ウィンズロウ=著、東江一紀・訳、創元推理文庫)

シリーズ3作目。
主人公ニールの活躍が事件解決に大きく寄与している点で、前作よりはいい。

なぜかいきなり西部劇が始まる。
そこに、最強でもなんでもない主人公が放り込まれたらどうなるか。
そういう試みが面白い。

銃撃戦という身も蓋もない闘いをどう盛り上げるか。
西部劇の肝はそこだと思っているが、
まずます見事にやっているのではないだろうか。

読了指数
今回:+1
合計:-103

2025年5月1日木曜日

出:学びのチャンス

Chance』(Robert B. Parker, Berkley Books)

1997年発行のペーパーバック。

とても読みやすい。
各章が短くて、一息で読める。
一息、一息、一息、と読んでいって、
50回くらい息継ぎしたら向こう岸に着いていた、というような感じ。
縦読み漫画でも読んでいるようなスピード感であった。

文法的に壊れた英語をしゃべる人がたくさん出てくる。
それでもちゃんと言っていることはわかる。
じゃあ、文法って何?
正しい英語って?

文法的に正しくあろうとして
何も言えなくなってしまうのは馬鹿馬鹿しい、
ということが学べる。

ストーリーはもちろん面白い。
"Spenser's in Vegas!" という宣伝文句だけでも、
もう読みたくなる。

読了指数
今回:+1
合計:-104



2025年3月5日水曜日

出:マッチョとガリ

 『初秋』(ロバート・B・パーカー=著、菊地光=訳、ハヤカワ文庫)

マッチョなおっさん探偵とガリガリ少年の話。
ストリート・キッズ』の評に「逆初秋」というのがあったが、なるほどその通り。
ただ、少年の仕上がり具合はだいぶ違う。
こういう価値観はもう古いんじゃないかと主思うんだが、
最近は逆にそうでもなくなってるのかな。
でも、ハード・ボイルドって、最近あんまり聞かないよな。

全体も各章も短くてトントン読めるのがいい。
このくらいでいいんだよなあ、全然。

読了指数
今回:+1
全体::-105


2025年1月24日金曜日

出:議論の乱れ

日本語の乱れ』(清水義範、集英社文庫)

日本語に関する短編小説集。
『たとえて言うならば』という作品がよい。
「重要なことは、たとえ話なんかにしないで、事実そのものをよく見て理解して考察すべき」という主張には「その通り!」と言いたい。

そう言えば、この間新聞でこんな意見を読んだ。

「冤罪の可能性が少しでもある以上、死刑は廃止すべきだ、と言う人がいるが、それは論理のすり替えである。
交通事故で死亡する人が少しでもいる限り、自動車は走らせるべきではない、と言っているようなものだ」

って、早速すり替えとるやん。
この発言をしているのが弁護士だというのが何とも。
議論を生業としているような人がこうなのだから、
誰でもすぐこうなっちゃうってことだ。
オレも重々気をつけないと。

読了指数
今回:+1
合計:-106

2024年7月17日水曜日

出:俺に積ませた本

 『僕を殺した女』(北川歩実、新潮社)

この本はずっと、机の真ん前の本棚の、座る場所からちょうど真正面の位置、目の高さよりちょっと上の段にあった。
この本を買ってからこの方、背表紙のタイトルと作者名を目にしない日はなかった。
刺激的なタイトルを見ては、どんな内容だろう、はやく読みたいな、と思い続けてきたのだった。

そしてとうとう読むことができた。
衝撃を受けた。
1995年が舞台?
そんなに古いのか、この本は?それとも過去の話を書いているだけなのか?
そう思って奥付を見ると、1995年に発行された本だった。

この小説の主人公が味わったのと同じくらいの、いや、それ以上のタイムスリップ感である。
毎日見ていた本が、そんなに古かったんだから。

確かに、携帯電話なんかまったく出てこないし、「看護婦」とか言ってるし。
え、95年てそんなに古い?携帯が普及してなかったのは何となく覚えているが、「看護師」という言い方はまだ浸透してなかった?
95年ってそんなに昔か?
いや、もう29年前か。29年⁉

ようやくインターネットが普及し始めたころで、ネット通販はほぼなかった時だから、この本も当然本屋で買ったということになる。どの本屋かは全く覚えていないが。
あの頃はよく、本屋をはしごしてミステリー小説などを買い漁っていたのだ。
読めるスピードの何倍もの冊数を。
それらの本屋も、今ではほとんど残っていない。
何だろう、この喪失感は。

で、この本の内容だが、概ね上記のような雰囲気のことを主人公がグジグジと考え続ける話だ。
詳しいことは、何を書いてもネタバレになるので一切書けないのだが。

今さらネタバレしたところで、誰が困る?

読了指数
今回:+1
合計:ー109

2024年6月28日金曜日

出:俳優X

容疑者Xの献身』(東野圭吾、文藝春秋)

実に面白い。
本の中のガリレオはそんなセリフは言わない。
いきなり壁に数式書きだしたりもしない。
でもやっぱり、実に面白い。

帯によれば、「2005年ミステリーの金字塔」で、
「週刊文春傑作ミステリーベストテン」「このミステリーがすごい」「本格ミステリ・ベストテン」で1位を獲得して3冠達成だそうだ。
それを2024年に「読んだ」と堂々と発表するブログはここくらいか。

映画版のキャスティング、堤真一はあり得ないよ。
観てないけど。

読了指数
今回:+1
合計:-110

2024年3月25日月曜日

出:初読

 『初恋』(ツルゲーネフ・著、神西清・訳、新潮文庫)


多分、高校のときの国語の先生が勧めていて、大学生になってから買った本。

当時の新潮文庫の100冊のうちの1冊であり、

帯に『拳骨で読め。乳房で読め』というコピーが。

今の時代だったらちょっとダメなやつかな。


もちろん小説は名作であり、一読の価値あり。

あの時読んでおけば、と後悔する。

きっと今とは感じ方が全然違ったんだろうな。


読了指数

今回:+1

合計:-114

2024年3月17日日曜日

出:古い小説

警視庁草子 上 山田風太郎明治小説全集1

警視庁草子 下 山田風太郎明治小説全集2

(山田風太郎、ちくま文庫)


変な小説である。

できたばっかりの警視庁の大活躍や悪戦苦闘を描いているのかと思って読み始めたが、

むしろ警視庁に対抗する勢力に肩入れして書かれているような感じで、

どの人物に感情移入していいのかよくわからない。

筋立ても結構いい加減で適当に書いている節がある。

随所に「なにそれ?」という展開がある。


しかし、昔読んだ山田風太郎の忍者物はもっと変だった。

忍者という設定をいいことに、何でもありのバトルを描いていた。

訳が分からないのだが、なんだかぐいぐい読まされて

あっという間に読み終わってしまったのだった。


それに比べるとこの作品は読むのに時間がかかった。

読み始めてから約2年ほどかっかた。

買った時から数えれば、27年目でようやく読み終わった。

明治という時代に特別な思い入れでもなければ、なかなか大変かもしれない。

昭和に書かれた明治時代の小説を平成に買って令和に読み終わる。

何と大河な。


実はこの山田風太郎明治小説全集、全巻持っている。

どういう動機で買ったのかは覚えていないが、

目の前の本棚のちょうど目の高さの位置の棚に刺さっていて、

20年以上もずっとこっちを見ている。

あと8タイトル、12冊もある。

どうしよう。


読了指数

今回:+2

合計:-115



2023年2月9日木曜日

出:0文字感想


君のクイズ』(小川哲、朝日新聞出版)

面白いとしか言いようがない。どう面白いかは説明しがたい。したら怒られる。そういうタイプの小説。クイズ好きも、そうでない人も。

読了指数
今回:+1
合計:ー118

2020年8月24日月曜日

出:あとがきと解説と


マイナス・ゼロ』(広瀬正、集英社文庫)

これもまた、ネタバレに気を使う作品。
夏への扉』の関連書籍、と言ってしまっていいかどうか。

大変なことが起きているのにどこかのんきな感じがする。
そんな味わい。
昭和の描写が素晴らしい。
オレから言えるのは以上だ。

作者自身のあとがきと星新一の解説が参考になる。
ネタバレせずに面白さを伝える方法として。
真似できるかといえば、特に星新一のほうは無理だが。
どんな手法かは、これもまた
ネタバレになるので言えないが。

読了指数
今回:+1
合計:-115

2020年8月1日土曜日

出:計画的






十二人の手紙』(井上ひさし、中公文庫)


面白い、ということ以外、言うことができない。
どう言ってもネタバレになりそうだ。

この精密な、計画的な仕事ぶり。
膨大な下準備があったことは間違いない。
大量のメモ、下書き類が目に浮かぶ。
すべての物語作者は、
井上ひさしの仕事を真剣に学ぶべきだ。

今さらながら、惜しい人を亡くしたと思う。
もう新作が読めないということも残念だが、
ここ数年の政治状況を見ていて、
「井上ひさしが生きてたら黙ってなかっただろうな」
と思うことが多々ある。

ちょっとだけ本書の内容に触れれば、
なじみのある地名がいろいろ出てきてニヤリとする。
余計に心に刺さった。

読了指数
今回:+1
合計:-116


2020年6月29日月曜日

出:コールドスリープ




夏への扉』(ロバート?A・ハイライン、福嶋正実・訳、ハヤカワ文庫)

本書に関する年譜を記す。

1957年 原書発行
1979年 本書(ハヤカワ文庫版翻訳書)初版発行
1997年 オレ、本書を買う
2020年  オレ、本書を読了

買ったのは1997年の夏。
なぜそこまではっきりわかるかというと、
まず奥付に「1997年7月31日 43刷」とある。
そして何よりも帯に「夏のブックパーティ'97」とある。
「江口寿史イラストの特製図書カードを600名様に!」だとか。

23年もの間本棚の奥深くで冷凍睡眠していたこの本を掘り出したというのは、
コロナ休校中であまりにヒマそうだった本好きの息子に
何か読ませる物はないかと探してのことだった。
これはちょうどいいのを見つけた、そう言えばオレもこれ読んでなかったな、と
そこら辺に置いて解凍していたら 休校が終わってしまった次第だ。

原書が書かれてから40年後に本書を買った時点では、
作中で未来として描かれている年代はまだ辛うじて未来だったが、
ようやく読んだ今となってはだいぶ過去のことになっている始末。
世の中のあまりの変わりように
本書自身が一番びっくりしているだろう。

もし子どもがいなかったら一生読まなかったかもと思うと
巡り合わせというものを感じる。
なんだか息子に読ませるタイミングを逃した感もあり
再びの冷凍睡眠に──

読了指数
今回:+1
合計:-117

2017年6月5日月曜日

出:人間と審査


蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷』(恩田陸、幻冬舎)

全編、「ピアノコンクールとは何なのか」を考え続ける小説。

自分の子供がちょっと出たりするようになって知ったのだが、
日本には様々なレベルのコンクールがたくさんあって、
結構なビジネスになっているようだ。
出るほうにも開催するほうにもそれぞれメリットがあるからこそだろう。
出た人みんなが「出て良かった」思えるかどうかはわからないが。

ピアノに限らず、コンクール・コンテストの類はあふれるほどある。
テレビでやるお笑いのコンクールなんかだと、審査員になったつもりで見ることもある。
さらに、その場にいる審査員がどういう基準で審査しているのか、
ということを考えながら見たりする。

この人達、客の笑い声に引っ張られて審査してないか?と思うこともある。
審査する側もプロの芸人であることが多いから、
客受けが最重要なのかも知れない。
むしろ、それ以外に何がある?

ピアノではどうか。
クラッシック音楽としてのガチガチの評価基準がありながら、
各審査員の感性や、客受けまでもが入り込む余地があるのかどうか。
その辺が、本作の大きなテーマだ。
個人的には、審査員の視点が一番の読ませどころだと思った。

完全に固定された基準のみに基づけばいいのだったら、
「審査」という仕事は将来的には機械に置き換わっていくだろう。
スポーツの「判定」は徐々にそうなりつつある。
これもまた小説のテーマになりそうで、
楽しみなことである。

読了指数
今回:+1
合計:-108

2017年4月13日木曜日

入:売れてる


蜜蜂と遠雷』(恩田陸、幻冬舎)

ハードカバーの小説を買うのはずいぶん久しぶりな気がする。
たまにはこういうのも、な。

読了指数
今回:-1
合計:-109

2014年11月11日火曜日

出:勝負のパラメーター


項羽と劉邦〈下〉 (新潮文庫)
項羽と劉邦〈下〉』(司馬遼太郎、新潮文庫)

楚漢戦争、決着。

トレーダー目線で見ると、戦争のからむ歴史物というのは
いろいろと勉強になる。

武力や勇猛さに固執した項羽と、
戦はからっきし下手だが、食料や兵員の確保の面で上回った劉邦。

勝つために大事なのは何かということは、見誤りやすい。
勝負には多くの側面があるのに、ほんの一部分しか見ていなければ、勝てないのだ。
戦場での戦闘は実は戦いのほんの一部であり、その前の準備の段階で
ほとんど決着はついている。

そういえばドラマのほうはまだ録画を見終わっていない。
こっちの決着もつけねば。

読了指数
今回:+1
合計:-77

2014年9月17日水曜日

入:(下)


項羽と劉邦〈下〉(司馬遼太郎、新潮文庫)

さて、いよいよ佳境。大河原上なら決して読まない巻。

読了指数
今回:-1
合計:-77

2014年9月14日日曜日

出:ガオと司馬


項羽と劉邦〈中〉 (新潮文庫)
項羽と劉邦〈中〉』 (司馬遼太郎、新潮文庫)

引き続き、ドラマと平行して読む。
秦と楚の争いから、楚漢戦争へ。

ときに過剰な演技で感情的に盛り上げるドラマに比べれば、
この本の描き方は淡々として見える。
その違いは、あたかも項羽と劉邦の違いのようだ。

ドラマとの平行読みは、今のところ大成功だ。

読了指数
今回:+1
合計:-76