2017年6月5日月曜日

出:人間と審査


蜜蜂と遠雷
蜜蜂と遠雷』(恩田陸、幻冬舎)

全編、「ピアノコンクールとは何なのか」を考え続ける小説。

自分の子供がちょっと出たりするようになって知ったのだが、
日本には様々なレベルのコンクールがたくさんあって、
結構なビジネスになっているようだ。
出るほうにも開催するほうにもそれぞれメリットがあるからこそだろう。
出た人みんなが「出て良かった」思えるかどうかはわからないが。

ピアノに限らず、コンクール・コンテストの類はあふれるほどある。
テレビでやるお笑いのコンクールなんかだと、審査員になったつもりで見ることもある。
さらに、その場にいる審査員がどういう基準で審査しているのか、
ということを考えながら見たりする。

この人達、客の笑い声に引っ張られて審査してないか?と思うこともある。
審査する側もプロの芸人であることが多いから、
客受けが最重要なのかも知れない。
むしろ、それ以外に何がある?

ピアノではどうか。
クラッシック音楽としてのガチガチの評価基準がありながら、
各審査員の感性や、客受けまでもが入り込む余地があるのかどうか。
その辺が、本作の大きなテーマだ。
個人的には、審査員の視点が一番の読ませどころだと思った。

完全に固定された基準のみに基づけばいいのだったら、
「審査」という仕事は将来的には機械に置き換わっていくだろう。
スポーツの「判定」は徐々にそうなりつつある。
これもまた小説のテーマになりそうで、
楽しみなことである。

読了指数
今回:+1
合計:-108