2010年2月1日月曜日

出:将棋散歩

 
5手詰将棋』(高橋道雄、創元社)

将棋に対するスタンスも様々あろう。

マラソンにたとえれば、世界の大きな大会に招待されるトップクラスの選手、つまりプロがいる。
大会に参加費を払って出る、なかなかの実力を持つアマチュアもいる。

大会に出ることなど考えないジョガーと同様、頭脳の健康のため、純粋な楽しみのために将棋を指す人もいる。このあたりが一番多い層か。

オレはどこに属するかというと、ジョギングまでもいっていない、ウオーキングというと若干スポーティーすぎる。「散歩」レベルの取り組みだ。

将棋は好きだが、自分ではあまり指したくない。野球やアメフト同様、観るスポーツだ。
時々無性に詰将棋を解きたくなるんだが、もはや脳に高い負荷がかかるような問題はやりたくない。

そういう欲求を持っているところに現れたのが、この、高橋道雄著『5手詰将棋』だ。
この本は、前書きにも書かれているが、なかなかないタイプの詰将棋集だ。書店で数問解いてみて大変気に入った。いったんは我慢して帰ったのだが、やはりどうしても欲しくて後日購入した。

何しろ解きやすい。すいすい進む。失礼ながら便所に置いといて読んだのだが、コトが終わるまでに1問も解けないということがなかった。必ず何問かは解ける。
それでいて、簡単すぎてつまらないということがない。どの問題にもちゃんと詰将棋らしい工夫があって、驚いたり感心したり出来る。
この、すいすい解けることと驚けることの両立。これが、なかなかないことなのだ。

普通の詰将棋集は後ろにいくほどだんだん難しくなる。最初は簡単だが、あるところから急激に難しくなって進まなくなる。そうして放り出した本が便所に何冊も積んである。
この本も一応上り坂にはなっているようだが、それに気付かないくらい緩やかで、まさにちょっと汗ばむくらいの散歩にうってつけだ。
玉を詰めるという将棋の最大の快感を気軽に味わいたいのなら、まずこの1冊をお勧めする。

ところで本書のオビには「テーマは『実戦!!』」、「大会前のトレーニングや詰みの訓練に最適」などと書いてある。
確かに、大会前にはウオーミングアップとして簡単な詰将棋を素早くたくさん解くのが有効とか聞いたことがある。しかしやはりこの本は将棋散歩でこそ味が出るとオレは思う。実戦型というのも、解きやすさをアップするための要素だ。

ちなみに、初心者にとってはこの本でも十分難しいだろう。そういうときは、もっと簡単な本がなんぼでも出ているので、そちらから入られたい。詰将棋こそは最高のパズルであることを知っていただきたい。

読了指数
今回:+1
合計:-19