2016年5月10日火曜日

出:ヤバい人向け


よくわかる心理統計)
よくわかる心理統計』(山田剛史、村井潤一郎・著、ミネルヴァ書房)

心理学は、統計学にかなり依存している。
心理学が説得力を持つのは、統計学の裏付けがあるからだ。
人の心の働きというつかみ所のないものを
きっちり数量化できるようになったことによって、
心理学がメジャーな学問になれたのだとオレは思っている。

今でこそそういうことがわかっているのだが、
心理学を志した学生時代はそうじゃなかった。
心理学に関する、数字を抜きにしたおもしろ話というは
世の中にいっぱいあって、
そういうものに触れて、面白そうだからやってみようと思ったものの、
大学に入ってみれば、心理学というのは
実験をして統計解析をする、というこのと繰り返しであることが
わかったのだ。
「それは聞いてなかった」となるわけだ。
オレだけでなく、周りの学生もそんな感じだった。
今でも、多かれ少なかれそうなんじゃないだろうか。
心理学専攻はどういうわけだか文学部にあったりして、
「統計学ヤバい」という心理学専攻生が
大量に生み出されることになった。

そういう事情の元、本書が書かれた。
微分積分もΣ記号も出てこない。
それでいて、日常のレポート作成には困らない程度には
統計学の知識を身につけることができる。
説明は非常にゆっくり丁寧で、これでもかというほど親切だ。
もしこれが理解できないならば、心理学はあきらめたほうがいい。
そう言っていいくらい、究極的に理解しやすい本だ。

「ヤバい、助けて!」という学生の緊急避難先として
十分に機能するだろうし、
この春入学した心理学を志す学生が
最初に読む本としてもお勧めだ。
そして、
「心理学をやるわけではないが、
とにかく統計学が必要で、
でも全然わからない」
という社会人が読んでも決して損はない。


あの学生時代から、倍以上も歳を取った。
回り回って株のシステムトレードをやるようになって、
統計学の必要性を感じるようになって早幾とせ。
ようやく去年あたりから勉強しはじめた。
金絡みのぶん、今のほうがモチベーションは高い。
最終的には、独自の統計手法を編み出す
くらいになりたい。

ちなみに、「年齢」というのは
量的データの比率尺度だから「倍」という計算ができる。
「時刻」や「日付」や「西暦」だと、
間隔尺度だから、ふたつのデータの間がどのくらい
あいているか、ということは言えるが
「倍」という表現には意味がない。

というようなことは、本書のはじめのほうを読めばわかる。


読了指数
今回:+1
合計:-104