2014年1月25日土曜日

出:劇的


話し言葉の日本語 (新潮文庫)
話し言葉の日本語』(井上ひさし、平田オリザ、新潮文庫)

この本を読む前に『初日への手紙 』(井上ひさし、白水社)を図書館で借りて読んだ。
芝居の台本が上がるまでに作家とプロデューサーの間でやりとりされたファックスなどが主な内容だ。
それはもう凄まじい作業であり、書く、というのはこんなにも大変なのか、ということを思い知らされる。
井上ひさしのやり方が極端すぎる、ということなのかも知れないが。
とにかく劇作家を目指す人はもちろん、物語で身を立てようとするすべての人は必読だ。
それと同時に、〆切に追われたことのある人、つまりほとんどすべての社会人にとって怖い読み物でもある。
「えっ?稽古が始まってんのに、たったのこれしか!?」
「ヤバいよ、初日が、初日が来ちゃうよ!!」
と、読みながら何度も叫んだものだ。
そんなバカ丁寧なお詫びのファックスを書く暇があったら、 作業を進めたほうが・・・などと
ハラハラしつつ、こうやって説明すればわかってくれる、許してくれるのか、と、目から鱗が落ちる。
今後の参考にしたい。

その次に『井上ひさし全芝居〈その7〉 』(新潮社)を、これもまた図書館で借りて読み、
上で書いていた作品が無事できあがったことを確認する。
プロットから台詞を書く際に、こうやって面白くするのか、と勉強する。

という流れがあった上で、この『話し言葉の日本語』を書店で見かけたものだから、1秒も考えずに買う。
こういう流れがなく、タイトルだけを見て手に取ったならば、読んでみてかなりの違和感があったかも知れない。
最初のほうこそ話し言葉の日本語のことを話しているのだが、だんだんと演劇の話になっていく。
最終的には、戯曲の書き方の優れたテキストができあがる。
劇作家2人が演劇雑誌で対談したのだから当然ではある。

話し言葉とはいうものの、それを台詞として「書く」ことを生業とする人達の対話であるから、
坂本タクマにとって役立つ本であることは間違いない。
ただ、「そんな細かいことをいちいち考えているから、ホンの上がりが・・・」と、余計なことも思ってしまうのだった。

読了指数
今回:+1
合計:-69