2013年11月11日月曜日

出:大山の作意


詰将棋 作意を探せ―配置駒で推理する(週刊将棋・編、毎日コミュニケーションズ)

詰将棋を作る人のことを「詰将棋作家」という。
詰将棋というのは創作活動によって生み出された作品だ。
あるアイディアがあって、それを実現するためにいろいろな工夫をする。
解く人にびっくりしてもらおうとか、爽快な気分になってもらおうとか、
何らかの意図がある。
ある側面では、漫画家や小説家、作曲家などのやっていることと似ている。

小説などとは違って、詰将棋では、作家の意図は最初からすべて盤面に示されている。
ぽつんと離れて置かれた歩が詰み筋に重要な役割を果たすことがある。
一見メインのストーリーとは関係なさそうでも、すべての駒には必ず意味がある。

そういった、図面に示された配置駒から作家の意図をくみ取り、
問題を解くことに役立てよう、というのが本書の趣旨だ。

他に類を見ない、画期的な本だ。
詰将棋に苦手意識がある人でも、この本でコツをつかむことができるだろう。
詰将棋を「味わう」ことができるようになるためにも有用だ。

ただ、追随する本がないということは、あまり需要はないようだ。
確かに配置駒を読んだところで実戦にはあまり役立ちそうにない感じはする。
将棋好きの人が詰将棋を解くのは、大体が強くなりたいからだ。

しかし、実戦で勝つということにいつのころからあまり興味が無くなったオレにとっては、
詰将棋こそ、将棋で一番面白い分野になった。
十数年前に買った当初はあまり意味がわからない本だったが、
ようやく最近になって読み通すことができるまでになった。
年輪を重ねて、芸術が理解できるようになってきたようなものか。

詰将棋作家の人達は実に驚嘆すべき仕事をなしており、
もっと世間的な尊敬を集めてもよさそうに思うのだが、
現実にはまったく不遇だ。
詰将棋漫画みたいなものをやってブームを起こしたいとkろだが、
企画は通りづらいかも知れない。

ところで、本書を半分くらいまで解いたところで、
作品自体も実に素晴らしく、立派なもんだと思って
誰が作ったのかとあちこちひっくり返してみたら、
前書きにたったひとこと、故・大山十五世名人作であることが記されていた。
すでに亡くなっていた大先生の作意を図面からくみ取るという、
深奥な書物であることが判明した。
タイトルを「大山の作意」にするなど、名人ブランドを強調する作りにすれば
もっと売れたんじゃないかと思うんだが。

読了指数
今回: +1
合計: -66