2013年9月28日土曜日

出:じっちゃんの名にかけて


ビット・トレーダー (幻冬舎文庫)
ビット・トレーダー』(樹林伸、幻冬舎文庫)

『金田一少年の事件簿』の原作者が書いた、トレーダー小説。

素晴らしく読ませる。
株のデイトレードという、この世で最もエキサイティングな世界を描きつつ、
犯罪小説としてズンズン話が進んでいき、
ページをめくる手が止まらない。
漫画界のヒットメーカーの筆はさすがにすごい。

何より引き込まれるのはトレードシーンだ。
刻々と変化する板の状況の描き方がリアルで、
自分がトレードしているような感覚になれる。
この作者、間違いなく、やっとるね、これ。

文句なくお薦めできる小説だ。
しかし、いちトレーダーとしては、ちょっとひとこと言わせてもらいたいこともある。

株が題材の物語というと、どういうわけだかかなりの頻度で
犯罪がからんでくる。
この作品もだ。

そりゃあ、大金が飛び交う市場には、
クリーンな人ばかりじゃなく、中にはダーティーな人もいるだろう。
しかし、あまりにダーティーなところばっかり
描きすぎなんじゃないかと思うのだ。
クリーンにやっても相場は十分すぎるほど面白いし、儲けることもできる。

とは言っても、ネットでつながったコンピューターの中だけで完結する相場で
エンターテインメント小説を書くのはなかなか大変だ。
物語を現実社会にまで広げる手段としては、
犯罪が手っ取り早いしわかりやすい。
そういうことなのだろうか。
何しろ金田一少年の原作者だしな。

読了指数
今回: +1
合計: -66