2020年5月27日水曜日
2020年4月18日土曜日
出::政治家必読
『群衆心理』
今ほど、群集心理がはっきり見えるときはない。
新型コロナウイルスの蔓延に伴って、様々な噂やデマが流れた。
トイレットペーパーがなくなる、という情報は完全にデマだったが、
信じた人が買いだめに走り、それを見た人がつられて買い、
という状況が報じられるとさらに人が店に殺到し、
本当に棚から消えた。あっという間に。
報道では「なくなることはないですから冷静に」と
呼びかけていたが、効き目は薄かった。
一人一人は知的で理性的なな人々も、
寄り集まってある条件により群集と化すと、
完全にバカになって同じ方向に走り出す。
理屈は通用しない。
相場本によく書いてあることだが、
120年も前にこの古典が指摘している。
本当に一箇所に集まる必要はない。
地理的に離れていても、群集にはなり得る。
今や世界中がひとつの群集だ。
群集は指導者を欲する。
このあたりから、本書は政治色jが濃い。
フランス革命の英雄にして大罪人、ロベスピエールやナポレオンが
俎上に載せられる。
読んでいると、現代のあの人やあの人のことを
言っているんじゃないかと思えてくる。
指導者には明晰な頭脳など必要ない、
そんなものは群集を導く上では邪魔になるだけだ。
「指導者は、特に狂気とすれすれのところにいる興奮した人や、半狂人の中から排出する。」
オレではない、著者のル・ボンが言っている。
しかし、あの人やこの人のことじゃ・・・・
民主主義って大丈夫なのか、と思わざるを得ない昨今だが、
この本を読むとますますその感が強くなる。
群集たる選挙人を籠絡するのに、候補者が備えるべきなのは「威厳」であって、
能力面は関係ないらしい。
その上で、選挙人には、途方もない、ウソとしか言いようのない約束をも躊躇なくする。
さらに、
「反対派の候補者については、これが、とんでもない破廉恥漢であって、幾多犯罪を犯した事実を知らぬ者はないということを、断言と反復と感染の手段によって、人々の頭に植付けて、相手を粉砕すべく努めなければならない。もちろん、その証拠らしいものを何ら探し求める必要はない。」
オレじゃない、ルボンルボン。
いやしかし、本当にこういう手法でもって、半狂人が
選挙に通っちゃってることがあるんじゃないのか?え?
100年以上前に書かれたにも関わらず、あんな人やこんな人の出現を
預言しているかのようで空恐ろしい。
ただ、ル・ボンは群集の負の側面だけを書いているわけではない。
群集の力は、ときにとてつもない偉業を成し遂げる。
革命もそのひとつだろうし、ウイルスに打ち勝つのも、
群集の力なくしては難しいだろう。
現代の基準からいったら決めつけが過ぎるんじゃないか
と思えるところもあるが、
心理学や社会学の礎を築いた本のひとつであり名著であることは間違いない。
自分が危険な群集の一員と化さないためにも、座右に。
読了指数
今回:+1
合計:-116
2020年1月5日日曜日
入・出:新しい常識
『セイバーメトリクス入門 脱常識で野球を科学する』(蛭川皓平・著、岡田有輔・監修、水曜社)
こういう本が大好きだ。
データによって、人々が見落としている事実を発見する。主観に基づくのではなく、あくまで客観的に。
昔からそう言われているから、というだけで正しいと鵜呑みにするのではなく、正しいとも正しくないともわからない、と、いっぺんニュートラルな位置に立って、データを調べ直してみる。
そうすれば、常識にとらわれていたときにはわからなかった新たな世界が開けるかも知れない。
送りバントはして欲しくない。これは、オレが野球を見ながらここ数年ずっと思ってきたことだ。
バントなどせずブンブン振って、得点のバラツキを上げ、それによって格上のチームに勝つ。そういうことが可能なんじゃないかと思っていたのだが、本書にはそれ以上のことが書いてあった。
プロ野球において、ほとんどのケースで送りバントは得点の期待値を下げる。得点をする確率も下げる。ピッチャーなど打力の著しく劣る選手が打席に立つときを除き、単純な送りバントは愚策と言っていい。
「ほら見ろ」と言いたい。
2017年の楽天イーグルスは、開幕からしばらくの間「1番・茂木、2番・ペゲーロ、3番・ウィーラー、4番・アマダー」という打線を組んでいた。2番打者に送りバントをさせる、という従来の常識を完全に捨て去っていた。素晴らしかった。勝ちまくった。
ところが、シーズン途中に茂木とペゲーロをケガで欠くと、バントを多用するようになった。チームは転落し、優勝を逃した。バントのせいとばかりは言えないが・・・少なくとも、3割前後打つ銀次にバントをさせるのはどんなケースでも大悪手だ。
そのほかにも、「盗塁は得点を増やすのにあまり有効ではない」とか、「打たせて取るピッチングは存在しない」とか、セイバーメトリクスが明らかにしてきた様々な事柄が議論されている。野球の見方が変わる。
シストレに応用できそうな考え方もいろいろあったし、刺激的。
読了指数
今回:±0
合計:-117
2019年7月3日水曜日
出:ゲームを作るというゲーム
『ボードゲーム デザイナー ガイドブック 〜ボードゲーム デザイナーを目指す人への実践的なアドバイス』(トム・ヴェルネック【著】、小野卓也【訳】、スモール出版)
子供とよくボードゲームをする。
これまでに遊んだのは、Dixit、カルカソンヌ、カタン、パンデミックなど。スタンダードなものばかりだ。さすがに売れてる傑作ゲームだけあって、子供達の食い付きもよい。
遊びがデジタルに傾きすぎた反動なのか、アナログゲームで遊ぶ人が増えているらしい。
確かにこれは面白い世界だ。
よくできたゲームが毎年たくさん出てくる。人間がボードゲームで遊び始めてから何千年もたつのに、いまだに驚くようなアディアが出てくるのに驚く。
そんなボードゲーム業界の内情が知りたくて、そして、自分でも作れるかも、とちょっと思って、この本を手にした。
自分で作るという目論見は、すぐに打ち砕かれた。
この本の目玉は、テストプレーヤーへの質問リストと、デザイナーの自己評価リストだ。
とにかくテストプレーをして、改善していくことが強調されている。
ちょっとでもルールを変えたらテストプレー、プレーヤーの感想を参考にまた改善、ということを何度も何度も繰り返す。
ゴリゴリのゲーマーだけでなく、初心者などいろんな人を入れて試す。
プレー可能なすべての人数(2~4人なら2人、3人、4人)で試す。
こうして、面白さを追求すると同時に、デザイナーが思いもしなかった破天荒なプレーによってゲームが破綻しないかをチェックする。
気が遠くなる。
この作業自体が、終わりのないゲームのようだ。
ルールはできるだけ簡単で、その場ですぐ始められるものにする。しかも、起こりうる状況をすべて網羅している必要がある。それでいて結果が運に左右されすぎず、戦略性を持たせなければならない。
同時には達成困難ないくつもの項目に折り合いをつけていく。
そうした長い長い過程を経てもなお、最初のアイディアが輝きを失わなかったときに、傑作が生まれるんじゃないかと思う。
作る過程を趣味として楽しむならともかく、売れるゲームを作ろうなどという野望には、おいそれと手を染めるものではないな。
この本で、ひとつハッとさせられたところがある。
「チェスがもし今日発明されたとしたら、市場に出る見込みはほとんどないだろうと関係者はいう。」(p.68)
その理由は、ゲーム編集者がそのアイディアを販売員や消費者に伝えるのが難しいから。業界人同士でさえ伝えるのが難しいのなら、プレーヤー同士が教えあうのも当然難しいだろう。
それじゃあ売れない、広まらない。
チェスがダメなら、当然将棋もダメだろう。囲碁も多分ダメだろう。覚えることが世界一多い(個人の感想)麻雀なんか、もってのほかだろう。
うちの子供達にも、一応囲碁や将棋は教えたのだが、食い付きは悪かった。
いつまでたっても、何をしたらいいのかわからない、とにかくなんだかわからない、という感じなのだ。
うちの居間では親父がよくCSの麻雀番組を見ていて、それが子供達の目にも入っている。地上波の歌番組に小柳ルミ子が出てるのを見て「あ!!麻雀の人だ!!なんで歌ってんの?」というほどには見ているのだが、麻雀はまったく理解していない。見ているだけでわかるものではないようだ。オレも、あまりにめんどくさいので教えていない。
それに対して、最初に挙げたようなボードゲームは箱を開けたその日から面白い面白い言って夢中になるのだから、親としても買った甲斐があるというものだ。
遊び同士がユーザーの時間を奪い合う中で、長い歴史を誇る盤上・卓上遊技といえども伝統にあぐらをかいていたらヤバい。
プロ棋士のみなさんが熱心に普及活動を行うのも、そういう危機感があるからなんだと、この本を読んで思った次第である。
ただ、じゃあなんで、チェスや囲碁・将棋は長い年月を経ても生き残っているのか、とも思う。
100年後、今出回っている新しいボードゲームのほとんどはなくなっているだろうが、チェスや囲碁や将棋が消えるとは思えない。
なぜか?それは、現代のボードゲーム作家にこそ考えて欲しい問いである。
読了指数
今回:+1
合計:-117
2019年6月4日火曜日
2019年3月8日金曜日
入:アートであーる。
『アート・オブ・Rプログラミング』(Norman Matloff・著、大橋真也・監訳、木下哲也・訳)
けっこうデータをいじっている。Rも、触り始めてから年数だけはたっている。けれども、ちっとも上達しない。何をするにもネットで調べて、そのたびに「ああ、こんな書き方もあったのか」と必ず思う。Rはどこまで深いのか、オレはどこまで浅いのか、いつになっても知れない。
ここらで一念発起し、Rに堪能になっておきたい。それで手に取ったこの本であるが、やはり1ページごとに「ああ、こんな書き方もあるのか」の連続である。ただし、ネットで調べるよりも「なぜそうなるのか」というわけがわかるのがよい。読み通せば、もうRのプロと言ってもいいだろうな。
読了指数
今回:-1
合計:-117
2019年2月4日月曜日
出:モデルとなるべき本
『データ解析のための統計モデリング入門──一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC』(久保拓弥、岩波書店)
わかりやすいことこの上ない。
読みながら何度も「わかる!」と叫ぶ。
これには、理解しやすいという意味と、「共感」の意味がある。
「そうそう、なんでも正規分布に従うわけじゃないよね」とかそういう「わかる」だ。
モデルを、データへの当てはまりの良さだけでなく予測の良さを加味して選ぶ、
というあたり、「それそれ!」という感じだ。
あとがきによれば、時間をかけて何度も書き直したらしいが、
そのエネルギーのほとんどが「わかりやすさ」に向かったと想像する。
よーく練り込まれているな、練り込まれた結果としてわかりやすい文章に
なっているな、というのが読んでいていよーくわかる。
タイトルには「どんな虫ケラでもわかる」などとうたっていながら、
実際のところはただ情報を端折っただけでちっともわかりやすくない、
あまり練られていない本も多い。
しかし、この本はこれだけ小難しそうなタイトルでありながら、
ちゃんとわかる。
タイトルにある一般化線形モデル、階層ベイズモデル、MCMCというのが
なんなのか、ということが、章が進むごとにわかっていく。
植物の種の数という、単純なデータを解析しながら、
だんだんと複雑なモデリングを行っていき、そのたびに新たな手法を取り入れる。
なかなかのスピード感、疾走感だ。
これにはひとつからくりがあって、
難しい理屈はすべて「章末の参考文献を参照」となっているのだ。
この割り切り、この潔さが成功している。
どこまで説明すればいいのか、という判断が絶妙で、
眠くなる前にズンズン進んでくれる。
これからデータ解析を始めようという人には
大変ありがたい。
その後、もっと学びたかったら参考文献を読めばよい。
この著者が薦めるのだから、間違いないだろう。
統計モデリングのやり方はもちろん、
本の書き方についても勉強になった。
最後に注意点。
わかりやすいといっても、もちろん誰が読んでもわかるというものではない。
高校数学や確率統計の知識は前提となる。
「回帰分析」という言葉にピンと来ないならば、
ちょっと調べてから読んだほうがいいだろう。
読了指数
音階:+1
合計:-116
2019年1月7日月曜日
入:ハードカバーでソフトな統計学
『データ解析のための統計モデリング入門──一般化線形モデル・階層ベイズモデル・MCMC』(久保拓弥、岩波書店)
データに親しむ1年にしたい。
最初の1章を読んだが、わかりやすくするための配慮が素晴らしい。特に、訳語・記号・記法についての説明が類書になく丁寧で、読み進める際の苦労がぐっと減りそうだ。
読了指数
今回:-1
合計:-117
2018年12月14日金曜日
入:いつになったら積ん読を解消するのか?
『たのしいベイズモデリング──事例で拓く研究のフロンティア』(豊田秀樹・編著、北大路書房)
大変に興味深い様々なテーマについて調査し、統計的に分析している。
例えば
「歴代M-1グランプリで最も面白いのは誰か」
「いつになったら原稿を書くのか?」
「本当に麻雀が強いのは誰か?」
など。
読みこなすにはベイズ統計の知識が必要だが、結論だけ見てもかなり面白そうだ。
読了指数
今回:-1
合計:-116
2018年8月19日日曜日
入:すべての歴史はネタバレしている
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(山﨑圭一、SBクリエイティブ)
世界史を勉強しなおすにあたり、動画授業を探していて行き当たったのが
世界史20話プロジェクト
なのだった。
受験世界史に苦しむ高校生から、学び直しの社会人まで、幅広く支持されている非常にわかりやすい授業だ。
この本は、その動画を公開している現役高校教師が書いた世界史の入門書。
最初のほうを読んでみたが、動画に出てきた解説がギュッと凝縮されていて、ズンズン読めそうだ。
このまま読んでいくと、今読んでいる『ローマ人の物語』のネタバレが起きるわけだが・・・
気にしすぎか。
読了指数
今回:-1
合計:-115
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