『
推計学のすすめ―決定と計画の科学』(佐藤信、講談社)
非常に、極めて、素晴らしくわかりやすい。
統計学のうち、推計統計学と呼ばれるものについての入り口として書かれた本。
超能力があるのかないのかとか、
パン屋が目方をごまかしてるんじゃないかとか、
予防注射に効果があるのかとか、
そういう話題をネタに、いろんな統計分析を実際にやりながら説明する。
扱っている分析手法としては、
t検定やカイ二乗検定、分散分析、相関係数などがある。
実験計画についても1章があてられている。
専門書で読むと「ウェー」となりやすいこれらの項目だが、
この本では、もしかしてこれ以上は無理なんじゃないか、というくらい
やさしく、わかりやすく書いてある。
他書で挫折を味わった人にはぜひともお勧めしたい。
読みながら、常日頃疑問に思っていることを
統計的に検証してみるとよい。
オレの場合は、「プロの将棋では先手が有利と言われているが、本当か?」
ということを検証してみた。
手順としては、
1.先手と後手に勝率の差はない、と仮定する。
2.差がない場合の期待勝利数(全局の50%)と実際の先手勝利数・後手勝利数を使って、
カイ二乗検定を行う。
3.その結果、偶然起こるにしてはあまりに低い確率のことが起こっていることがわかる。
4.従って、先手・後手に勝率の差はない、という仮説は棄却される。
こうして、先手が有利である、ということが統計的に裏付けられた。
これは、プロ棋士が口にする実感と合致する。
といっても、実際の先手勝率は52~54%くらいなので、
素人目には大した差じゃないように思える。
しかし、統計学的にも、プロの実感的にも、はっきりと先手有利なのであるから、
後手で勝った場合はちょっとお金を多めにもらえる、くらいの処置は
したほうがいいんじゃないかと思うのだが。
こんなふうに、何かを主張したいときに統計学は役に立つ。
そして、金を儲けるためにも。
システムトレーダーなら、本書の内容くらいは完全に理解しておく必要がある。
それはとても簡単なことである。
読了指数
今回:+1
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