2011年5月23日月曜日

出:粒ぞろい


7手詰将棋
7手詰将棋』(高橋道雄、創元社)

5手詰将棋の続編。5手もよかったが、7手もよい。
さすがに5手詰めほどにはすらすら解けず、時間がかかった。
ただ、5手の延長としての7手であり、急激に難しくなった感じはしない。

このシリーズのいいところは粒がそろっているところ。
変に難しい問題がなく、頑張れば解けるくらいのところに統一されている。
その結果、途中で放り出されるという本として悲しいことが少ない。
書き手としても見習いたいところ。

読了指数
今回:+1
合計:-51

2011年5月22日日曜日

出:敗因


FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)
FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン (朝日新書)』(広瀬隆、朝日新書)

 大体は『原子炉時限爆弾の中身を踏襲している。
福島第一の事故を受け、「ほれ見たことか」という内容が付け加えられている。

その中で、M9.0という発表は原発事故を「しょうがないもの」と見せるための
でっち上げだ、という憶測が書かれているが、
これはいただけない。
広瀬さん、やっちゃった。
これでわかった、こういうことを書くから信用されないのだと。

東電や政府がデータを隠すから信用できないというが、
反原発の側も似たようなことをやってるんじゃないのかという
疑いすら出かねない。

これまでの反対派も、これから反対派になる人も、
福島の事故を防ぎきれなかったことの「敗因」を分析していくことになるだろう。


ともあれ今願うのは、
自分や家族が福島第一原発から出た放射性物質を
ひとかけらも体内に取り込まないことだが、
すでに取り込んでしまっているのかも知れない。
原発周辺の方々のリスクはどれほどのものか。

読了指数
今回:+1
合計:-52

2011年5月19日木曜日

入:飢餓感


FUKUSHIMA 福島原発メルトダウン』(広瀬隆、朝日新書)
原発事故はなぜくりかえすのか(高木仁三郎、岩波新書)
大地動乱の時代―地震学者は警告する(石橋克彦、岩波新書)

 地震と原発について知りたい。
新聞は読んでいるが、なかなかお腹いっぱいにならない。
図書館に物色に行ったが、めぼしいものはみな貸し出し中だった。

というわけで3冊ほど買った。
このくらいで食い飽きるとは思えないが、
あまりのめり込みすぎるとおかしくなってきそうなのでほどほどにしておく。

読了指数
今回:-3
合計:-53

2011年5月16日月曜日

出:勝者などいない


原子炉時限爆弾
原子炉時限爆弾』(広瀬隆、ダイヤモンド社)

広瀬隆は、勝ったのだ。

広瀬隆について坂本タクマは、
「長年原発に文句を言ってるけどあんまり相手にされていない変なオッサン」
くらいの認識しかなかった。
あんな本を読んでいるのは危ないやつだとさえ思っていた。
しかし。

広瀬隆は、勝ったのだ。

相場の世界にも、常に大崩落を警告している人がいて、
それは時たま当たるのだ。
だって、相場に大崩落はつきものだから。

まさか日本の原発で、そんな大崩落が起きるとは。
こんなに危険なものだったなんて、知らなかった、知らされていなかった。
恥ずかしいやら腹立たしいやら。

その程度の知識であるから、
この本が、福島の事故のまさに直前と言っていい2010年8月に刊行されていたことに
度肝を抜かれた。
わかっている人、ちゃんと調べている人には、
十分に予想できた惨事だということか。
地震国日本の原発には様々なリスクが存在し、
人間ごときには制御不能だと。

しかも、本書で最も危険性を強調している浜岡原発は、
首相の判断に従って停止された。
これもまた、大戦果だ。


だが、広瀬隆はまったく勝ったとは思っていないだろう。
福島のような事故を防ぐことが最大の目標だったわけだから。
原発反対派の人達すべてに敗北感があるだろうし、
本当の戦いはこれからだと思っているだろう。
最終的には勝つも負けるもない。


本書のような扇情的な書き方は、
今読めばかなりの説得力があるが、
福島以前にどれほど人の心に届いたかは疑問だ。
煽れば煽るほどスーッと冷めていく。

しかしどうやれば平和に浸りきった我々に
迫り来る惨禍を伝えることができただろう。
我々は、いっぺん思い知るしかなかったのだろうか。

なにしろもう二度とごめんだ。

読了指数
今回:+1
合計:-50

2011年5月14日土曜日

入:二人名人


羽生VS森内百番指し』(羽生善治、森内俊之、毎日コミュニケーションズ)

将棋ファンなら買いの一手と思い、買う。
飾っとくだけでもいいというタイプの本。
読むけどね。いつか。


読了指数
今回:-1
合計:-51

2011年5月10日火曜日

出:地味な巨人



確率論と私
確率論と私』(伊藤清、岩波書店)

数学は、現実から出て理論を発展させ、再び現実に戻る。
物理学などの現実の現象を記述するために数学が導入され、
それが理論を突き詰めていく間に純粋数学になっていく。
そしてあるとき、その理論がまたより複雑な現実に対応するため利用される。
これが数学の発展の歴史だという。

ギャンブルを数学的に研究するために始まった確率論が、
伊藤らの手を経て現代数学として発展した後、
金融工学に応用されるようになった。
「伊藤の公式」といえば、ウォール街では有名だ。

伊藤自身は、株はおろか定期預金も利用したこともないほど
金融取引とは無縁の人生だった。
そしてアメリカを中心に数学を学んだ者が金融工学に身を投じ、
日々巨額のマネーを動かして、ある者は大成功し、ある者は破滅するという状況を
憂えていた。
その懸念はリーマンショックで現実のものとなった。
さすがの慧眼である。

本書は、数学に関するまじめな考察と、
他の数学者との交流などを記しており、
金融工学を実際に使っている連中のような派手さは一切ない。
確率論を研究しながら、博打の臭いがまったくしない。
恐るべき偉人としか言いようがない。

読了指数
今回:+1
合計:-50

2011年5月8日日曜日

入:予言の書


原子炉時限爆弾(広瀬隆、ダイヤモンド社)
SP 警視庁警備部警護課第四係(金城一紀、角川文庫)

原発事故後、様々な「予言」が発見されているが、『原子炉時限爆弾』もそのひとつ。

『SP』は、映画が素晴らしい出来だったので。

読了指数
今回:-2
合計:-51